ADHD(注意欠如・多動性障害)と障害年金の受給について社労士が解説!
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、日常生活や仕事に支障をきたす場合、障害年金の対象となることがあります。特に、注意力の持続が難しく、職場や日常の活動に影響が出ている場合、障害年金の申請が検討されます。例えば、会話に集中できない、作業を途中で放棄してしまう、頻繁に物を失くすなどの症状が挙げられます。これにより、ストレスが蓄積し、うつ病などの二次的な精神疾患を併発するケースも見られます。
目次
障害年金の種類
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。初めて医療機関を受診した日が国民年金加入中である場合や、20歳未満である場合は、障害基礎年金の対象となります。一方、会社員として社会保険に加入している期間に初診日がある場合、障害厚生年金を申請することが可能です。
障害基礎年金では、1級または2級の等級に該当する必要があり、障害厚生年金では1級から3級までが対象です。障害厚生年金には3級があるため、比較的軽度の症状でも受給が認められる可能性があります。
初診日とは?
ADHDは先天的な発達障害ですが、障害年金の申請においては「発達障害の症状で初めて医療機関を受診した日」が初診日となります。知的障害では、生年月日が初診日とされることもありますが、ADHDの場合は、初めて医師に診察された日が基準です。
ADHDで障害年金を受給するためのポイント
ADHDで障害年金を受給するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
初診日の確定
ADHDのために初めて医療機関を受診した日(初診日)を確定させることが必要です。通常、初診日は医療機関から書面で証明してもらいますが、カルテが破棄されていたり、医療機関が廃業している場合には、他の方法で証明する必要があります。
納付要件
初診日の前々月時点で年金の納付要件を満たしていることが求められます。原則として、初診日の前々月から20歳までの期間に、3分の2以上の年金を納付していれば、要件をクリアします。
例えば、初診日が10月10日であれば、前々月の8月分から20歳まで遡って納付状況を確認します。もし納付が不足している場合、前々月から1年間分の保険料がすべて初診日の前日までに納付されていれば要件を満たします。
社会保険に加入している期間や、免除申請を行っている場合も納付扱いとなることがありますが、申請の際は細かい条件を確認する必要があります。
障害の程度
初診日から1年6ヶ月後、または申請時点で、障害の程度が障害年金の等級に該当することが必要です。等級は1級から3級まであり、1級が最も重いです。
1級:常時援助が必要なほど、社会性やコミュニケーション能力が著しく欠如し、日常生活に適応できない状態。
2級:社会性やコミュニケーション能力が乏しく、日常生活で援助が必要な状態。
例①: うつ病・ADHDで2級の受給が認められたケース
例②: 軽度知的障害・ADHDで障害基礎年金2級を受給したケース
3級:社会性やコミュニケーションに問題があり、労働に大きな制限を受ける状態。
事例: ADHDで障害厚生年金3級を受給したケース
1級は日常生活のすべてに介助が必要な状態、2級は日常生活において援助が必要な状態、3級は労働が大きく制限される状態と理解すると分かりやすいです。
日常生活能力の判定基準
障害年金の認定では、日常生活における以下の7つの要素が考慮されます。
- 食事の適切な摂取
- 身の回りの清潔保持
- 金銭管理や買い物
- 通院や服薬
- 他者との意思疎通や対人関係
- 身の安全の確保や危機対応
- 社会的な適応
これらは「1人暮らし」を基準に判断され、家族の支援を除いた場合にどの程度自立しているかが評価の基準となります。
ADHDの認定基準
ADHDは発達障害の一種で、主に「多動性」「不注意」「衝動性」が特徴です。具体的な症状として、以下が挙げられます。
- 落ち着きがなくじっとしていられない
- 不注意によるミスが頻発する
- 気が散りやすく、長時間集中できない
- 興味のあることに過度に没頭してしまう
- 物をよく忘れる
- 整理整頓が苦手
- 順序立てて作業を進められない
- 時間管理が苦手で、締め切りや約束を守れない
- 衝動的な言動や行動
- 衝動的な買い物が多い
ADHDの原因は、前頭葉の機能や神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の異常が関与しているとされていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。治療は主に薬物療法や心理療法で行われます。
ADHDによる障害年金申請の注意点
障害年金の申請は、主に医師が作成する診断書と、申請者自身が作成する病歴・就労状況等申立書に基づいて判断されます。
診断書の重要性
診断書は医師が作成するものであり、申請者はその内容に手を加えることができません。正確な診断書を作成してもらうために、自分の症状や日常生活、仕事での困難さを医師にしっかり伝えることが重要です。
病歴・就労状況等申立書
申立書は申請者が自分で作成する書類で、発病から現在までの経過、日常生活での不便さや就労状況を詳細に記載します。診断書との内容が一致するよう注意が必要です。発達障害の場合、出生から現在までの状況を5年ごとに記載することが求められます。また、病院の変更や生活の大きな変化があった場合は、それらを反映させることが重要です。
当事務所での実際の受給事例
当事務所で申請し、実際に障害年金を受給できた事例について紹介いたします。
【相談者】
・年齢:40代男性
・傷病名:広汎性発達障害 注意欠陥多動性障害
・決定した年金種類:障害厚生年金3級
・年間受給額:58万円
対人関係でうまくいかず医療機関を受診したところ上記の診断を受けました。
その後初診日の特定などを当事務所で、サポートし障害年金を受給することができました。
またその後就労しましたが、無事に更新することができました。
よくある質問
障害年金を働きながら受給できるのか?
働いていても障害年金を受給することは可能です。特に、ADHDの症状によって労働が制限されている場合や、障害者雇用の枠で働いている場合など、配慮を受けて働いている場合は受給が認められるケースも多いです。
障害者手帳と障害年金の違い
「障害者手帳の3級を取得したから、障害年金も3級になるのか?」という質問もよくありますが、障害者手帳と障害年金は別の制度です。手帳が取得できても、障害年金が受給できるとは限りません。また、手帳を持っていなくても障害年金の申請は可能です。
障害年金の申請に関しては、無料相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
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